あっさりと夏はやってきた。
上野、根津、谷中、白山。
アメ横でスニーカーを見て
笑門来福の千社札を買おうか買わまいか悩んで、
谷中の猫に挨拶をして
白山通りで一息ついたら。
夏が
すぐ横に来ていた。
悪いことが起こるのだという。誰かを好きになりすぎると
悪いことが起きるのだ、と。
だから、そう熱くなるなよ、と頭の中の人が言う。
よけて、よけて、どうしたらいいのかわからなくなってしまう前によけて。
話し手の気持ちにシンクロしてみようかと思ったがやめた。
そういう気持ちがそこにある、そういう人がいる。
私はそれを理解する。それだけでいいのだ。
同じ気持ちになってみる必要なんかない。

気が付いたら頬が日に焼かれていた。
ヒリヒリと痛いピンク。
地下鉄でウトウトして日比谷。呼吸が楽になる緑の濃さ。
夕空、ベース音、笑い声と炭酸のはじける音。
夕風に触られて、鳥肌が、たつ。
私の親愛なる人がもう一人の親愛なる人と、気を許した体で、笑う。
自分が少しだけ出来のよいシナプスになったような気持ち。
幸せな自己満足。

山手線、目がさめたら池袋。
またね、の声でひとりになる準備と体勢。
でも今日は少しだけゆるい。ひとりの空気もあまい。
良い、宵、にちようび。