母、鎌倉

寝過ごしたー



あほみたいにこんどる!
鎌倉のくせに〜


鎌倉のばーちゃんちにとまりにいく。
鎌倉駅から徒歩、25分。
大塔宮を超えると、山盛りの緑の中を歩くことになる。
街灯は少なく、薄暗く、怖くないのは、
隣に私を産み育てた強き女性がいるからだ。



鎌倉の家には今誰も住んでいない、ばーちゃんは病院にいる。
家のメンテナンスは世田谷のおばちゃんと大船のおじちゃんが
ほぼ毎日交代でしている。



爪きりを探してると、すげぇもんを発見してしまった。


父の愛人(×2)から父へのラブレター。
離婚、兄との別れを綴った母の日記、
父の父から母の父へ宛てた詫び状、および借金の依頼状
母から母の父に宛てた手紙。


ほんっと昼ドラな家系だな!


父の愛人【その①】からのラブレターは、達筆ながらも知性がまるでない。
こんな馬鹿まんこと不倫してたのかよ。
幻滅するぜ。と言ったら母が
お父さんはそいう女の人が元々好きなのよ。
ホステスと女房以外の種類の女はいないと思ってるんだと。


では、なぜに娘に聡明さを求めるのか!!!


父の愛人【その②】からの手紙では、
どうするつもりなの?いつまで逃げるの?
奥さんに申し訳なくないの?私は申し訳なくて気が狂いそうよ、
となじられている。


この人はこの手紙を書いた何年か後に父の子供を生む。
子供を産んだのに、俺は知らないよ〜と逃げ回る父に
為す術をなくした、【その②】はうちの母に電話してきた。
子供が生まれました、と。

母は言った、わかりました、認知させましょう、と。


元々、母の家の金が目当てで結婚したのだそうだ。
父一家は、父の父の莫大な借金で首がまわらなくなっていた。


(ちなみに、父の父も何度も女と逃げている。)


しかも、結婚を強く勧めたのは母の儘母のばーちゃんで
幼き頃に母親を亡くし、家庭を回してきた母と
母の父との強固な絆に嫉妬して、
鎌倉から母を追い出したかったのだとか。


婚前の身元調査でわからなかったわけがない、
父一家の借金、父の父が新興宗教にはまって、
先祖代々の仏壇を焼き払い、
親戚一同から絶縁されていたこと。
父には付き合っている女性がいたこと。


大丈夫、あのおうちはしっかりとした家柄だから、きっと幸せになれるわよ。


何も知らなかった母は、嫁に行った。
不幸になった。


「おかあさんは人質だったのよ。」
私たちは金目当ての人質の子供、なわけだ。
そりゃ、愛なんてあるわけない。



逆を言えば、愛していないから耐えることができたわけだ、母は。
子供を育てる=仕事のために、彼女は耐えることができた。



思うのは、教養もあり、気立てもよい鎌倉のお嬢さんが
どうしてこんなことに
巻き込まれなくてはならなかったのか。


兄は何を感じていただろう?
自分さえいなければ、母は自由になれるのに、と思わなかっただろうか?
母は兄を育てるために、父の元で侮蔑され続けることを選んだのだ。


そして、なぜか七年後に私が生まれる。

「レイプされたのよ」
えーっと金目当ての人質のあげくレイプの末の子供です。
どうも、生まれてすいません。


まぁ、そんなことはどうでもいいのだ。
少なくとも私は父のことも母のことも超リスペクトしている。
親のことを一度も馬鹿にしたことがないってのは
ちょっとすごいことじゃないか。


男癖の悪さは父の遺伝子、
むやみやたらな我慢強さは母の遺伝子。
屈強に強いのは二人の遺伝子。


愛はなくとも、子供は生まれ育ちそれなりにやる。
遺伝子で決まってんだよ、きっと人となりは。既に。